名誉会員:宇多高明(UDA, Takaaki)

 宇多高明先生(1949年東京都生まれ)は,1967年東京工業大学理工学部土木工学科入学,1973年東京工業大学理工学研究科土木工学専攻修士課程修了,直ちに建設省へ入省,日本の海岸工学の草分けとして名高い土木研究所赤羽支所海岸研究室に所属,研究員,主任研究員を経て,1983年に赤羽支所海岸研究室長に就任された.その後,1993年に建設省土木研究所河川部河川研究室長,1996年には河川管理総括研究官,1997年からは河川部長を務められた.国土交通省への省庁再編後,2001年に国土技術政策総合研究所研究総務官に就任,総合技術政策センター長を併任され,2002年に国土交通省を退任された.退任後は,2002年に財団法人土木研究センターの審議役に就任,同センターなぎさ総合研究室長を兼務され,2005年には同センター理事,2009年には常務理事,一般財団法人への移行後も役職を継続され,2016年からは同センターなぎさ総合研究所長を務め,現在も海岸工学の第一人者として活躍されている.これらのご経歴の過程で,1980年から1981年には科学技術庁長期在外研究員として米国スクリップス海洋研究所へ留学,1983年には東京工業大学から工学博士の学位が授与された.また,1990年から1991年には筑波大学講師を,1999年から2002年東京工業大学教授(大学院総合理工学研究科)を併任,2007年からは日本大学客員教授(理工学部海洋建築工学科)を兼任されている.さらに,1993年に土木学会技術開発賞を受賞,2019年には瑞宝小綬章を受章されている.

 宇多高明先生の海浜地形に関わる学術上の多大な功績の中で特筆すべきは,Bagnold理論に基づく海浜変形モデルの開発が挙げられる.このモデルでは,海岸に人工構造物が設置された場合の地形変化予測や,砂嘴,barrier island, 尖角州,陸繋砂州の形成,島と島の接続・融合,風波による湖浜変形などの計算が可能であり,海岸の保全対策や調査研究分野に多大な貢献をなしている.さらに著書「日本の海岸侵食」「海岸侵食の実態と解析」「Japan’s Beach Erosion- Reality and Future Measures, 2nd ed.」では,自らの研究成果に基づいて,海岸侵食の発生要因を専門家はもとより一般にも分かり易く解説している.これらの研究過程で見られる現地の状況調査と現象解明の姿勢は,国内外での重要な活動においても実践されている.とくに1999年の海岸法の改正や,その後の海岸保全基本計画の策定には主導的な立場で携われている.また,国際協力においては,国際協力機構(JICA)の専門家あるいは調査団長として,モルディブ等の諸国において,海浜地形に関わる詳細な現地調査に基づく実証的な解析を行い,現地での技術支援対策を行い,現在でもJICAの海岸アドバイザーとして活躍するなど広範な活動を進めてきた.さらに,調査研究の経験を基に,日本大学客員教授として学生および大学院生を研究指導し,多くの海岸工学技術者の育成にも尽力されている.

 宇多先生は,2007年度から2008年度の2年間,会長として日本地形学連合を牽引され,2009年度から2012年度の4年間は副会長を務められた.2014年には東京大学空間情報科学研究センターで開催されたJGU夏の学校に出講され,海岸地形に関する講義を担当,2016年のJGU夏の学校では九十九里浜を対象とした巡検を企画実施して現地での指導を行うなど,若手の指導育成に尽力された.さらに日本地形学連合の大会には毎回のように参加され,常に示唆に富む発表で聴衆を魅了されるとともに,成果を日本地形学連合機関誌である「地形」誌上に原著論文として数多く発表され,現象の洞察と数値計算とを調和させたアプローチをもって地形研究の模範を示された.現在も各地の海岸へ出かけ,海岸の特性を自らの目で確認することをモットーとして精力的に活動を進めている.

 以上のことから,宇多高明先生を日本地形学連合の名誉会員に推薦致します.

文責:小林昭男
2026年9月26日推戴