名誉会員:藤木忠美 (Tadaharu Fujiki)

 藤木忠美氏(1924年生まれ)は,1948年に北海道大学理学部物理学科を卒業し,物理学科の助手などを経て,1955年に同大学に新設された理学部地球物理学科第一講座(陸水学)講師に就任した.以後,1987年に同大学理学部有珠火山観測所教授を定年退職するまで,地球物理学関係の学科・研究施設で研究と教育に携わってきた.陸水学と地形学の研究対象には重なる部分もあるが,所属された講座の主たる研究対象との関係もあって,氏は当時としては地形
学とは直接結びつかない研究,すなわち,温泉の湧出機構・成因に関する研究等でも業績を上げた.
 1960年代からは構造土や周氷河地形,さらには河川地形の形成過程に関する研究で業績を残した.まわりに地形学を本格的に研究しようとの動きが全くない当時の北海道大学にあって,このような研究が独自に進められたことは特筆すべきである.氏の人一倍強い自然愛好の念と自然を深く理解しようとの思いがなせるわざであったと考えられる.
 1979年の日本地形学連合の結成に際しては,まさに時が満ちて氏が呼びかけ人グループに参加されたように思われる.氏が結成の呼びかけ人のグループに参加したことによって,日本地形学連合はその研究対象の多様性とその目標の高さを大いにアッピールすることができた.日本地形学連合の大会では,デービス学説の形成過程について発表し,その考察の深さで会場にいた人を驚かせた.輪廻説に関するまとめは,「地理学的輪廻説の再考察」として「北海道大学地球物理学研究報告,No.49」に掲載されている.そこでは, Darwin,Playfair,Gilbert,Davisの関係について深い考察がなされている.地形学を他の分野の学問と結び付けて発展させようする研究者にとっては必読の論文であろう.様々な分野の統一的原理を求める研究が新たな段階を迎えている現在にあって,温故するに格好の論文である.
 1960年代の終わりごろ,当時の若手の地形研究者が頻繁に氏を訪ね,氏と刺激的な討論を行っている.討論はこの人たちの研究の視野を大きく拡げたと考えられる.
 藤木忠美氏に名誉会員の称号を献呈することは日本地形学連合の誇りとするところある.

文責:徳永英二
地形31: 129
2009年10月3日推戴