野上道男先生(1937 年新潟県生まれ)は,東京大学理学部地学科地理学専攻卒業後,大学院理学系研究科に進学され,南米アンデス地域の氷河と気候変化に関する研究をされ,理学博士の学位を授与されている.大学院修了後には東京都立大学理学部地理学科で研究・教育に従事された.1975 年には第 17 次南極観測隊夏隊として南極観測に参加されている.当時,観測隊メンバーは国立大学や国立研究所の研究者ばかりであったが,海外での研究成果が評価され,珍しく公立大学である東京都立大からの参加となった.
野上先生は,大学院生時代の研究から継続して 1980 年代初頭頃までは南米や北海道で,氷河地形や周氷河地形などを対象に気候地形学の研究をすすめられていた.それと並行して 1970 年代後半からは地形を数理的に扱う研究を始められている.水路実験に基づく流路網のメトリックな研究や,河川縦断面形や段丘崖の発達に関する数値シミュレーションなどであり,それらは野上先生の現在の研究まで続くものである.1980 年代中頃からは数値地形モデルを用いた地形の定量的な研究に取り組まれている.GISという用語がまだ一般的ではなかった時代に,コンピュータを用いた定量的な地形研究を始められ,この分野の嚆矢といえる.その後も精力的に研究をすすめられ,日本でのこの分野の礎を作られた.こうした地形研究のほかリモートセンシングや水文学の研究にも幅広く取り組まれ,多くの業績を残されている.
東京都立大学で理学部長を務められた後,1999 年に退職され,その後,日本大学文理学部地理学科教授に着任,2008 年に退職された.これらの大学において多くの人材を育てられてきた.日本大学退職後,現在まで幅広いテーマで研究を続けられている.日本地形学連合では,設立時より委員を,そして 1997年から 1999 年に会長を務められ,会の発展に尽力された.
以上のことから,野上道男先生を日本地形学連合の名誉会員として推挙いたします.
文責:中山大地
2019年11月8日推戴
