奥西一夫先生(1938 年京都府生まれ)は,1961 年に京都大学理学部地球物理学科を卒業後,同大学理学研究科の修士課程を経て,2002 年の定年退職まで長らく京都大学防災研究所に勤務され,退職後は名誉教授となられた.
奥西先生の研究業績は多岐にわたるが,中でも,それまで言葉はあっても明確な定義がなされていなかった“水文地形学”の中心課題を,“地形変化プロセスと水循環プロセスの間の相互作用の解明”として明確に位置づけたこと,さらに,それを具体化するために,水文学や陸水学とは一線を画した目的意識の下,水文地形学的水文観測の方法論を確立したことが挙げられる(「地形変化過程と陸水循環過程の相互作用―水文地形学の中心課題へのアプローチ―」1991 年:地形,vol.2).それに触発された当時の若手研究者が全国各地で同様の水文観測を開始したが,その成果として多数の学会発表がなされ,「地形」にも多数の論文が掲載された.当学会の中でも有力な,若手中心の水文地形グループが形成されたと言えよう.
奥西先生は,防災研究という,元々社会科学的要素の強い分野での研究を長年続けてきたこともあり,退職後も「国土問題研究会」に籍を置きつつ,一貫して防災情報の発信,防災関連裁判や環境関連裁判の支援など,単なる研究者の枠に留まらず,積極的な社会活動を継続されている.住民や市民に寄り添う形での発言(文章)は,いずれも科学的なデータや考察に裏打ちされた説得力のあるものばかりであるが,研究所時代に培った幅広い見識が生かされていることは言うまでもない.
日本地形学連合では,設立当初からの中心メンバーの一人として,会の運営に活動されていたものの,どちらかと言えば,縁の下の力持ち的な目立たない役割に徹しておられたが,1988~2001 年にデータベース主幹を,1995~1997 年に会長を務められ,会の発展に積極的に尽力された.
以上のことから,奥西一夫先生を日本地形学連合の名誉会員として推挙いたします.
文責:飯田智之
2019年11月8日推戴
